石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
シス-1,4-ヘキサジエンのヒドロカルボキシメチル化反応
木地 実夫岡野 多門中嶋 克彦小田切 清隆小西 久俊
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1981 年 24 巻 6 号 p. 393-395

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抄録

α-オレフィンのカルボニル化で, 摩擦損失の少ない高級潤滑油の製造に用いられる一定鎖長の直鎖脂肪酸をうるには, 一定鎖長のα-オレフィンを用いなければならない。エチレンとブタジエンの共二量化により工業的に製造可能な1,4-ヘキサジエンは, この目的に合った出発原料となりうる。本研究では, コバルト系触媒でえられるシス体を用い, C7-直鎖脂肪酸エステルをうる目的で, このヒドロキシメチル化反応を検討した。
触媒として, PdCl2L2 (ただし, Lは第三級ボスフィン類)-塩化スズ系, Co2(CO)8-γ-ピコリンを用いた。反応は一酸化炭素圧60~70気圧, 温度120~150°Cの範囲で行った。代表的な実験結果をTable 1に示した。
パラジウム触媒を用いた場合, 目的物である5-ヘプテン酸メチル (I) に対する選択性 (全生成物に対する割合で示す) が40~56モル%程度であった。この他に, 分岐物である2-メチル-4-ヘキセン酸メチル (II) と五員環ケトンIII, IVが生成した。五員環ケトンの生成はFig. 1に示す通り, 1-位の炭素上でカルボニル化がおこったのち, 加メタノール分解される前に環化する機構で示される。
Co2(CO)8-γ-ピコリン系触媒では直鎖エステル (I) の選択性は89モル%に達した。環状ケトンIII, IVは全く生成せず, パラジウム系触媒よりも優れた選択性を有していた。

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