石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
3-,5-,7-,9-メチルヘプタデカンおよび3-,5-,7-,10-メチルノナデカンの尿素付加物生成熱
大嶋 洋三工藤 正孝大沼 浩
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1982 年 25 巻 4 号 p. 269-272

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抄録

メチルアルカンの尿素付加性が直鎖化合物に比べ低いことからその尿素付加物生成熱の測定は困難とされて来たが, 本研究では双子型伝導微少熱量計の使用と反応相の適宜な選択, 活性化剤メタノール添加量の増大などの工夫により, 3-,5-,7-,9-メチルヘプタデカンおよび 3-,5-,7-,10-メチルノナデカン類の尿素付加物生成熱を測定した。メチルヘプタデカン類とメチルノナデカン類の尿素付加物生成熱はそれぞれ1.04~1.07kcal/mol-urea, 1.21~1.28kcal/mol-ureaの範囲にあった。これらの値は直鎖炭素数の等しいn-アルカンおよび2-メチルアルカンよりもそれぞれ0.7~0.8kcal/mol-urea, 0.4~0.5kcal/mol-urea だけ小さかった。上記付加物生成熱と付加物組成から計算されたアルカン1mol当たりの付加物生成熱は, 直鎖アルカンで最も大きく, 次いで2-メチルアルカンの順となり, その他のメチルアルカンで最も小さいが, 後者の各種異性体相互の差はほとんど認められなかった。付加物生成熱と尿素付加反応の平衡定数から求められた付加物生成にともなうエントロピー減少量は, 同一主鎖炭素数のアルカンについて, 直鎖アルカンで最も負に大きく, 次いで2-メチルアルカン, その他のメチルアルカンの順に小さくなるが, その他のメチルアルカンの相互間の相違は有意なものと認められなかった。これらの結果から直鎖アルカンが包接尿素管内で整然と配列しているのに比べ, メチルアルカンではその配列にすくなからぬ乱れがあるものと推察された。ただしメチルアルカンの中では2-メチルアルカンが包接尿素管への適合が容易であるのに対して, その他のメチルアルカンの適合は立体的にかなり困難であり, 不規則配列を余儀なくされているものと考えられた。

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