石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
直接液化法による木質系バイオマスからの燃料油の製造
小木 知子横山 伸也
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1993 年 36 巻 2 号 p. 73-84

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抄録
唯一の再生可能な有機資源であるバイオマスを直接液化し, 液体燃料を製造することを試みた。
コナラ木粉を, 水素や一酸化炭素などの還元性ガスを用いることなく, 水溶液中触媒存在下, 高温高圧で反応させ, 重油状の液化油を得ることができた。初圧20気圧 (終圧100気圧), 温度300°C, 保持時間0~30分, 触媒添加率4~5wt%の最適条件下で, 発熱量25~30MJ/kgの液化油が45~50%の収率で得られた。触媒については, 炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩が顕著な添加効果を示した。原料にコナラ以外の木材, 樹皮などを用いた場合, 液化油の収率は, 木材に関しては約50%で, 樹種による違いはほとんど認められなかったが, リグニン含有量の高い樹皮の場合では20~27%と低くなった。
上記の方法で木材から得られた液化油は粘性が高いので, これを改善するために反応系に有機溶媒を添加して液化を試みたところ, アセトンやプロパノール, ブタノールを添加すると, 流動性に富む液化油が収率よく得られることがわかった。水/2-プロパノール=1:1, 温度275°C, 圧力90気圧, 保持時間60分の時, 液化油の収率は70%に達した。また, 水/2-プロパノール=5:1の時に反応後の処理操作が極めて容易な液化油が収率よく得られた。本液化反応において, 2-プロパノールは反応中に水素供与体として働いていないことが示唆されたので, 水素供与性の異なるブタノールの異性体4種を用いて液化を試みたところ, 液化油の収率は45~55%で, ブタノール種に関わりなくほぼ一定していた。これらの反応のマスバランスの検討から, 液化反応が添加低級アルコールを水素供与体とする水素化反応によるものではないことが判明した。添加低級アルコールが反応中に消費されないことが判明したので, 反応溶液をリサイクルして液化を試みたところ, リサイクル溶媒を用いても流動性のよい液化油が十分な収率で得られることがわかった。
本液化法は木粉のみならず, アルコール発酵残さや下水汚泥などの他のバイオマスにも広く応用でき, 廃棄物処理方法としても有用であることが示唆された。
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