抄録
種々の炭素物質担体上に担持したニッケル/カルシウム(Ni/Ca) 触媒を調製し, これを用いてメタンの分解による水素製造について600~900Kという温度範囲で検討した。まず, 触媒活性の発現する条件を検討したところ, 予備処理として空気酸化 (573K, 4h), 水素還元 (673K, 3h) が必要であり, ニッケルが主触媒, カルシウムが助触媒であった。シクロドデカンの熱分解により得られた炭素にNi, Caをそれぞれ10wt%担持した触媒上, メタン濃度5%, 873K, W/F=8.21g-cat.h/molという条件で反応を行ったところ, メタン転化率80%以上で水素が生成した。この時, 有機の副成物は検出されなかった。この条件では, 主たる活性種はニッケルであるため, 初期活性に対する各種炭素担体の影響はそれほど大きくはなかった。しかし, 経時変化には炭素担体の効果が顕著に見られ, 活性炭, C60すすなどよりグラファイト, 熱分解炭素等がより好ましいことを見い出した。
メタン分解により生成した炭素はフィラメント状のグラファイトであることを, 触媒上の生成炭素の水素気流中での昇温脱離およびTEM観察により推定した。