浮萍科植物ノ生長ニ必要ナルマンガンノ最小濃度ニ就イテ

抄録

燐酸石灰ヲ以テ吸着處理シテ, 微量ノ重金屬不純物ヲ除去シタ培養液ニ鐵ヲ加ヘテモマンガンヲ加ヘナケレバ之ニ Spirodela 及ビ Lemna ハ生長シナイ。マンガン缺乏ヲ著シク起シ生長ヲ停止シタ Spirodela ガ新ニ生長ヲ始メルニ要スル培養液(100cc.)中ノマンガンノ最小濃度ハ5×10^-10モルデアル。マンガンノ濃度ヲ10^-9モルトナセノ Spirodela ハ榮養繁殖ヲ絶エズ續ケルコトガ出來ルガ體ハ甚ダ小形トナリ, 根ノ發育ハ著シク阻害サレ, 又黄化現象ヲ起ス。マンガンノ濃度ヲ5×10^-9モルニ増セバ體ハ常態ノ植物ニ比較シテ尚可ナリ小形デハアルガ其ノ他ノ外觀ハ大體同樣デアル。正常ナル發育ヲ爲スニ必要ナマンガンノ最低濃度ハ10^-8モルデアル。マンガンノ濃度ヲコレ以上増加シテモ (10^-7及10^-6モル) 生長速度, 體ノ大キサ, 根ノ生長其ノ他ノ點ニ於テマンガンヲ10^-8モル加ヘタ培養ト差異ガ認メラレナィ。Spirodela ノ培養實驗ヨリ燐酸石灰ニテ吸着處理シタ培養液ニハ少クトモマンガンハ5×10^-10モル以上ハ含有サレナイモノト推定サレル。培養中ニマンガンハ Spirodeal ノ體内ニ蓄積サレルガ4-5葉ノ集合ヨリ成ル1個體中ニ含有サレルマンガンノ量ハ100cc. ノ培養液ヲ用ヒ既ニマンガンノ訣乏セル Spirodela ヲ之ニ培養シテ新ナル生長ヲ始メ, 正常状態ヲ恢復シテ榮養繁殖ヲナサシメルニ充分デアル。此ノ濃度ハ少クトモ10^-8モルニ相當スル。 Spirodela 及ビ Lemna ノ培養ニ於テマンガン添加ノ有無ガ其ノ生長ニ及ボス影響ヲ比較スレバマンガン添加ノ培養ハコレヲ缺ク培養ニ對シ體ノ乾燥量ガ40-300倍大デアル。