植物学雑誌
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タバコ水耕における水位低下と生長
戸塚 績門司 正三
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1959 年 72 巻 855 号 p. 367-374

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抄録

水分経済と物質生産の両面から, 植物の一時的しおれがその後の生長にどのような影響を与えるかを追及するために, タバコ幼植物を水耕し, その水位を2,4,6,8cm.の四段階に低下させ, 約5000luxの連続照射,温度25°, 湿度49~62%,CO2濃度約0.55mg./l.の条件のもとで栽培した。水位の低下につれて生長は減退した。すなわち実験開始11日後の乾物生長量の割合は2,4,6,8cm. 区においてそれぞれ100,87.5, 78.9, 68.6となり, 最初の3日間の平均一日当りの純同化率NARは水位の低下の順に減少した。NARを支配する各因子の変化は次のようであった。a)非同化器官と葉面積との割合は各区において大差なかった。b)水位低下により葉に水分欠乏が生じた。c)葉の水分欠差と, 水位低下の度合を表わす根の生量に対する葉面積の割合 (active root/leaf area ratio) との間には密接な関係があった。d) 葉の窒素含量には顕著な変化はみられなかった。e)葉の水分欠乏が進行するにつれて同化量はほぼ直線的に減少したが,呼吸量はほとんど変らなかった。f)茎, 根の含水量変化は認められなかった。従つて茎, 根の呼吸率の変化は起らなかったと考えられる。
以上の諸事実にもとずいて生長の低下の原因をさらに確かめるために, 葉の水分欠差と物質生産を結びつけて2cm. 区と8cm. 区の生長を計算した結果, 実測値とほとんど一致した。それ故, 水位低下によつて生じた生長量の減少は主として葉の水分欠乏による同化量の減少の結果といえる。

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