植物学雑誌
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ホウレンソウの葉緑体 RNA の分画について
千葉 保胤菅原 淳池原 規勝
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1966 年 79 巻 940-941 号 p. 572-577

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抄録

葉緑体 RNA は 0.5 N PCA 処理 (70°, 30分) で完全に抽出されることは筆者らがすでに発表しているが, 今回はこの葉緑体 RNA (tota IRNA) を下記の方法で葉緑体から三つの分画にわけて抽出することができたので報告する. 葉から単離した葉緑体はグリセリンショ糖密度勾配法により精製した. この葉緑体からフェノール法で抽出すると, total RNA の 60-70% が水層に溶出された (phenol-released RNA). フェノール層から得られる残燈を 1% SDS で処理することにより, さらに約 10% の RNA が抽出され (SDS-released RNA), total RNA の 20-30% に相当する残りの RNA (residual RNA) は hot O.5 N PCA 処理によりはじめて抽出可能であることが見出された. Phenol-released RNA の塩基組成は total RNA に似ており, 両者ともグアニン含量が高く, SDS-released RNA のグアニン含量は両者に比べて低い値を示した. なお residual RNA は著しく異なった塩基組成すなわち異常に高いアデニン含量とそれに対応して異常に低いシトシン含量をもつことが見出されたが, このような異常な塩基組成を持つ RNA が実際に存在するか否かは今後の研究にまたなければならない.

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