抄録
症例の概要:患者は25歳女性.矯正担当医の紹介で来院した.矯正医は患者が矯正歯科治療途中に上顎前歯部の変色および臼歯
部の金属修復に対する審美的改善を希望したため,矯正歯科治療を終える前に補綴医と意見の交換を行う必要があると判断して
当医院を紹介した.矯正歯科治療後に補綴治療を行う前提で協議を行い,共通の治療目標を設定して矯正歯科治療を行った.矯
正歯科治療後に再評価を行い,矯正歯科治療で改善できなかった機能・審美的問題を抽出し,補綴治療による改善を行ったこと
で患者の満足する治療結果を得た.
考察:矯正歯科治療を行いトゥースポジションの改善を行ったことで,前歯部および臼歯部に最小限の治療介入で修復治療を行
えた.その結果,歯髄への影響を少なくでき,エナメル質を可及的に温存できたことで歯の強度を維持することに繋がり,歯と
補綴装置の予知性を高めることができたと考える.
結論:幅広い年齢に矯正歯科治療が可能である現在,補綴治療を成功に導くためには矯正医と補綴医の綿密なインターディシプ
リナリーアプローチが矯正歯科治療途中からでも重要である.