抄録
目的:40歳以上の矯正歯科治療を開始した中高年患者における下顎前歯叢生量と歯肉退縮量の関係を明らかにすることを目的に
横断的観察研究を行った.
方法:喫煙,糖尿病,全身疾患による長期的な服薬のある人を除く,矯正歯科治療を開始した40歳以上の患者55名における下顎
前歯叢生量,bleeding on probing(BOP),pocket depth(PD),clinical attachment loss(CAL)を測定した.
結果:歯肉退縮量は下顎前歯叢生量5 mm 以上群と5 mm 未満群で有意差(P=0.0000371)が認められた.さらに,下顎前歯部の歯
肉退縮量と叢生量において有意な正の相関が認められた(Spearman 相関係数0.528).
結論:中高年の下顎前歯叢生は,歯周炎の存在を問わず直接的な歯肉退縮の発生原因となり得る可能性がある.