日本緬羊研究会誌
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研究報文
中国産ヒツジ5 地方種の系統関係
角田 健司山縣 高宏常 洪楊 章平孫 偉毛 永江常 国斌耿 榮慶佐藤 啓造印牧 美佐生山本 義雄
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2012 年 2012 巻 49 号 p. 1-9

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抄録

 中国産ヒツジの5 地方種(窪地羊,湖羊,同羊,灘羊およびバインブルク羊)の系統関係を究明するため血液タンパク・非タンパク質型5 システムの遺伝子座位(TF, ES, HB-β, XP, KE)とウールタンパク質のDNA 型1 システムの遺伝子座位(B2CHSWP)における遺伝子頻度データを基にクラスター分析および主成分分析を試みた。他に比較として中国周辺国のモンゴル産ハルハ羊およびネパール産ビャンラング羊を加えた。多型分析には種々の電気泳動法およびイオン電極法ならびにPCR-RFLP 法を使用した。UPGMA 法によるクラスター分析では窪地羊とハルハ羊および湖羊とバインブルク羊の間でそれぞれ一つのクラスターを形成した。NJ 法でもほぼ類似な関係がみられた。これらの2 群の羊種集団に灘羊が関係し,さらに同羊が関与する構図で枝分れした。特に窪地羊,同羊および灘羊の脂尾羊系グループと湖羊およびバインブルク羊の脂臀羊系グループとが同族として中国・モンゴル系羊種集団を形成する様相がみられた。この集団とは全くかけ離れて分岐したのがチベット由来のビャンラング羊で,この傾向は主成分分析でも同様の結果であった。ただ主成分分析では同羊を除いた中国・モンゴル羊種はクラスター分析ほど顕著な系統分布を示さなかった。このように脂臀羊系,中国・モンゴル脂尾羊系およびチベット短尾羊系の3 系統に分化されても,その分化の程度は9.4%に過ぎなかった。脂臀羊系と中国・モンゴル脂尾羊系の分化度は低いが,その統合集団とチベット短尾羊系の間ではさらに13%の分化度が認められた。

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© 2012 日本緬羊研究会
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