日本緬羊研究会誌
Online ISSN : 2186-1013
Print ISSN : 0389-1305
ISSN-L : 0389-1305
研究報文
中国雲南高原における寧黒羊の起源
角田 健司山縣 高宏佐藤 啓造羅 成鋒毛 賛輝徐 志国張 少卿王 文強冀 徳君毛 永江楊 章平
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2017 年 2017 巻 54 号 p. 1-8

詳細
抄録

中国の雲南高原で飼養される羊種の一種である寧黒羊の由来起源を究明するため,血液タンパク・非タンパク型5 システムの遺伝子座位(TF, ES, HB-β, XP, KE)の遺伝子頻度データを基にクラスター分析および主成分分析(PCA)を試みた。タンパク型・非タンパク型システムの分析には各種の電気泳動法およびイオン測定法が使用された。これまでに調査された東・南アジア系の22 種の在来羊種を比較対象に,寧黒羊はHB-β座位のX 遺伝子とXP 座位のP 遺伝子やHB-β座位のB 遺伝子とKE 座位のL 遺伝子などの様々な組合せの遺伝子相互の特異な頻度分布から北方系羊種に属する特徴が認められた。これらの5 座位における寧黒羊の平均ヘテロ接合体率は0.3769 で,シプス羊やベンガル羊に近い値であった。Nei の遺伝距離のマトリックスから推定されたNJ 法による無根の枝分れ図において,寧黒羊はヒマラヤ系のグループ内で分岐することが認められた。PCA 法ではチベット系とヒマラヤ系グループの境界に位置した。したがって,寧黒羊は大きくはチベット・ヒマラヤ系に属し,ヒマラヤ系のバルワール羊に起源があることが判明した。

著者関連情報
© 2017 日本緬羊研究会
feedback
Top