日本緬羊研究会誌
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研究報文
GPS と加速度データロガーを用いた焼尻島における放牧羊の行動解析と放牧地の牧草成分の分析
苗川 博史山口 隼
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2020 年 2020 巻 57 号 p. 1-9

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抄録

本研究は,GPS および加速度データロガーを用いて,北海道焼尻島における放牧羊の行動解析と放牧地の牧草成分分析を行うことを目的に実施した。

供試羊(雄3,雌8)の24 時間における行動圏は,半径260 m, 範囲212 m2, 円周1640 m であった。GPS の記録と加速度データロガーを通して解析した24 時間連続計測における放牧羊の行動形は,休息,食草・移動,移動の3 種に大別することが可能であった。

加速度データロガー計測による行動形の割合は,個体間には違いが見られ,その差は有意であった(P<0.01)。昼間(日の出後~日没前)における休息,食草・移動,移動の割合は,雌が37.5±6.7%,44.4±5.8 %,16.7±6.2,雄が59.6±6.6 %,27± 16.5%,13.3±10.4%であった。また,夜間(日没後~日の出前)においては,雌63.7±7.3%,29.7 ±5.9%,6.6±5.2%,雄では62.3±9.3%,23.3± 15.6%,14.3±12.1%であった。昼・夜間における雌雄の各行動形割合にはそれぞれ違いがみられ,その差は有意であった(P<0.01)。

移動距離は,各個体間に差が見られ,その差は有意であった(P<0.05)。雌の移動距離は,昼間2.11±0.86 km, 夜間1.39±0.43 km, 雄のそれは昼間1.89±0.34 km, 夜間1.21±0.22 km であり,雌のほうが雄に比べ,雌雄ともに昼間のほうが夜間よりそれぞれ長く,その差は有意であった(P< 0.001)。

移動速度は個体差があり,その差は有意であった(P<0.05)。また雌雄ともに昼間のほうが夜間より有意に早く(P<0.01),昼間においては雌のほうが雄よりも有意に早いことが示された(P<0.05)。

放牧地における主な植生は,クローバー(Trifolium repens),オーチャードグラス(Dactylis glomerata),イタリアンライグラス(Lolium multiflorum)などの混成草地であった。採取した牧草は,粗タンパク質,粗脂肪,粗繊維およびミネラル成分を分析した。採取した場所のサンプルの間に大きな差違は認められず,一般成分の値からは,いずれのサンプルも放牧羊への粗飼料としての牧草成分の現状が把握できた。当地は,Na とCu が高く反芻動物である羊が要求するミネラルを多く含む牧草地であると考えられた。

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