日本泌尿器科學會雑誌
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尿路悪性腫瘍における腫瘍内リンパ球浸潤の意義
T・Bリンパ球分画およびTリンパ球の subsets と機能について
赤座 英之
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1981 年 72 巻 1 号 p. 86-97

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抄録

悪性腫瘍組織内リンパ球の浸潤について, 近年, 発展をとげつつあるリンパ球を中心とした免疫生物学的立場から検討を加えた. 膀胱腫瘍では術後, 遠隔転移を来たした症例において腫瘍内Tリンパ球の百分率の減少, TG細胞の百分率の増加およびTM細胞の減少が顕著であり, 遠隔転移も膀胱内再発をも認めなかつた症例では, Tリンパ球の百分率の腫瘍内増加の傾向が認められた. 睾丸組織では, germ cell tumor のうち最も良好な予後を持つ seminoma にのみ著明なTリンパ球の浸潤を認め, 中でもTG細胞の絶対数の増加は特記すべき事であつた. 腎腫瘍では, 腫瘍側腎動静脈血間にTリンパ球の百分率の差異は認められなかつたが, TG細胞の百分率が腎静脈血中において有意に増加していた. 又, 腎静脈血中リンパ球において, ADCC活性の有意な上昇, SLMCの上昇傾向が認められた. 以上より, 腫瘍組織内Tリンパ球の浸潤性, TG細胞の百分率の変化は, tumor-host relationship の立場における患者の予後判定の新しい指標となり得ること, 又, 腫瘍組織内において, Tリンパ球の機能分化の調節機構の存在が想定された.

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