日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
CTによる膀胱腫瘍浸潤度判定の研究
理想膀胱外壁線およびW/Hを中心として
内田 豊昭
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 72 巻 8 号 p. 1018-1034

詳細
抄録

CTによる膀胱腫瘍浸潤度判定をより客観的なものとする目的で, 新たに理想膀胱外壁線および腫瘍根部径 (W)-縦径 (H) 比を設定して各浸潤度別に比較検討し, 以下の検討結果をえた. (1) CTによる形態診断で, 小乳頭状型, 乳頭状有茎性型, 乳頭状無茎性型を示したものはすべて Stage B1以下であつた. 広基結節型を示した23例中19例は, CTによる判定通り広基結節型 Stage B2以上であつたが, 残りの4例は摘出標本では乳頭状無茎性型 Stage B1であつた. (2) 体位変換時の腫瘍変位性は, 乳頭状有茎性型形態を示したもののみに認められ, そのすべてが Stage B1以下であつた. (3) 理想膀胱外壁線外への腫瘍突出は広基結節型を示した Stage C 以上の全例に認められた. また, 従来膀胱壁外には突出しないとされてきた Stage B2の6例中4例に認められた. 突出した腫瘍根部の外壁を比較すると Stage B2ではその突出部の性状は平滑であつたが, Stage C 以上の場合は不整であつた. (4) W/H比に関しては, 乳頭状型を呈した Stage B1以下と広基結節型を呈した Stage B2以上は1.2で明瞭に判別できた.
以上より作成したCTによる膀胱腫瘍浸潤度判定基準により, Stage B1以下では37例中26例 (70%), Stage B2以上では19例中16例 (84%). 特に膀胱内注入物質として空気を用いた場合, Stage B2以上において15例中15例 (100%) と非常に高い一致率が得られた.
本判定基準による膀胱腫瘍浸潤度のCT診断は, 従来は極めて困難であつた深層浸潤性腫瘍の各 Stage の判別診断を可能とし, 臨床上極めて有用なものと考える.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top