日本泌尿器科學會雑誌
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Print ISSN : 0021-5287
ヒト泌尿生殖器系悪性腫瘍の異種移植に関する研究
第IV報. ヌードマウス可移植性ヒト腎細胞癌に対する数種制癌剤の治療実験
川村 直樹
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1982 年 73 巻 11 号 p. 1375-1394

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抄録

継代7~10代のヌードマウス可移植性ヒト腎細胞癌株を用いて制癌剤治療実験及びIfosfamide (IFM) 組織内濃度測定 (100mg/kg i. p. 時) を行なつた. 起源腫瘍は clear cell を主体とする腎細胞癌で, この形態はヌードマウス移植, 継代後も良く保持された. 又, 実験中の腫瘍生着率はほぼ100%で, その増殖速度もほぼ一定であつた. 治療効果は腫瘍増殖曲線, 実験終了時T/C比による増殖抑制効果及び光顕, 電顕による組織学的変化から判定した. プラチナ製剤ではCDDP 5.0, 2.5mg/kg, d-GHP 50, 25mg/kg投与群に効果が見られた (T/C=10.8%, 19.5%, 8.5%, 9.8%) が, d-GHPにより強い組織変化が認められた. しかし, 両薬剤とも副作用が強く, 一時的にヌードマウス体重減少が見られた. IFMは100mg/kd投与時に著明な増殖抑制効果があり, T/C比は2.2%であつた. 一方, 副作用はプラチナ製剤ほど強くなく, より臨床的に応用可能と思われか. VIB投与では著明な効果は見られなかつたが, 組織学的に clear cell の消失が観察された. CDDP, IFM併用投与では各治療群とも効果を認めたが, 特にCDDP 5.0mg/kg/inj, IFM 50mg/kg/inj群では腫瘍の消失する例が見られ, 両薬剤の相乗効果が示唆された. 一方, 副作用の程度はCDDP単剤投与時と同程度であつた. IFM組織内濃度測定では腎に最もIFM集積が認められ, 次いで肝, 肺中の濃度が高値であつた. 腫瘍内濃度は血中濃度よりも低値を示した.

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