日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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腎動脈瘤の診断と治療に関する若干の検討
日台 英雄木下 裕三村山 鉄郎宮井 啓国熊田 淳一佐藤 順井出 研松本 昭彦桜井 英夫塩之入 洋藤島 智
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1982 年 73 巻 2 号 p. 177-188

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抄録

腎動脈瘤12例を経験したので本邦文献報告例153例と共に主として診断及び治療に関し臨床的観察を加えて報告した.
自験例12例中3例は腎動脈瘤破裂後, 1例は破裂しかけていたが, いずれも救命することができた.
手術法としては4例に腎動脈瘤切除と血行再建 (うち3例では腎体外手術使用), 3例で腎摘除が行われた.
腎動脈瘤を疑わせる所見は腎部単純写真と静脈性腎盂撮影のみでも80%にみとめられるが, 一方, 尿所見や腹部血管雑音など血管造影所見以外がすべて正常な症例も5%にみられた.
腎動脈瘤の診断にあたつては多発或は両側性, 他臓器での動脈瘤合併などがあること, 対側腎の先天異常を伴うことがある点などにも注意する必要がある. また動脈撮影に際しては蛇行像による誤診をさけるため2方向の撮影を行つた方がよい.
腎動脈瘤破裂は在来からいわれている如く, 非石灰化で径の大な例に生じ易いものの, 輸状に石灰化した例や径が15mm以下のものにも生じうる.
非石灰化または不完全石灰化腎動脈瘤で10mm径以上の場合, ことに妊娠の可能性ある女性や高血圧, 腎機能障害, 疼痛が腎動脈瘤に起因しているときは手術適応となる.
腎保存手術が in situ に困難な場合には腎体外手術が推奨される. とはいえ患者の全身状態や局所々見によつては腎摘除術を行うべきで高血圧についての予後はむしろすぐれている.

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