日本泌尿器科學會雑誌
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Print ISSN : 0021-5287
オートラジオグラフィーによる人前立腺組織中 androgen receptor の同定
前立腺肥大症組織について
出村 孝義坂下 茂夫高村 孝夫黒田 一秀
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1982 年 73 巻 9 号 p. 1108-1115

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抄録

恥骨後式前立腺摘出術により採取した4例の前立腺肥大症組織を用いてオートラジオグラフィーを行つた. 今回は, 体内に3H標識した dihydrotestosterone (3H-DHT) を注入する従来の方法ではなく, 組織凍結切片と3H-DHTを in vitro で反応させて行つた.
Silver grain は前立腺の腺上皮細胞に多数認められ間質には少なかつた (Fig. 1, 2). 3H-DHTと receptor の結合は200倍のDHTで著明に阻害され (Fig. 3), testosterone で部分的に阻害されたが (Fig. 4), progesterone や17β-estadiol では阻害されなかつた (Fig. 5, 6). また膀胱組織では3H-DHTの結合は見られない事より, この結合は特異的なものであると考えられた.
この方法は従来の radioreceptor assay 法や組織化学的方法に比べ多くの利点をもつ.
1) 針生検などにより得た極少量の組織についても receptor の検索を行う事ができる.
2) receptor の検索と同時に組織学的検索も行う事ができ, 個々の細胞について receptor の有無を知る事ができる.
3) 3H-DHTと receptor の結合が200倍のDHTにより阻害された事より, この方法は他の組織化学的方法に比べより特異性の高い結合を示していると思われる.
4) シンチレーター処理により従来のオートラジオグラフィーに比べ, 露出期間を1/6~1/12に短縮する事ができた.

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