抄録
肉腫様腎腺癌の3症例を報告する. 第1例は, 54歳の男性で, 右側腹部痛と同部の小児頭大の腫瘤を主訴とした. 右腎原発の腫瘍が, 肝と上行結腸に浸潤しており, 肝への浸潤部を一部残して, 他は一塊にして摘除した. 組織学的には, 腫瘍の大部分は血管内皮腫様構造を示しているが, 一部に明細胞性腎腺癌像が認められた. 術後83日目に腎不全で死亡した. 第2例は, 33歳の男性で, 肉眼的血尿と左側腹部疝痛を主訴とした. 腫瘍化した左腎は, 小児頭大になり, 膵尾部と下行結腸に浸潤していたが, それらを一塊にして摘除した. 組織学的には, 大部分は紡錘形細胞肉腫様で, 一部に明細胞腺癌像が認められた. 術後7ヵ月目に再発で死亡した. 第3例は, 49歳の男性で, 肉眼的血尿を主訴とし, 右腎に手拳大の腫瘤を発見された, 手術時, 肝への小さな転移が見つかつた. 腎門部リンパ節にも大きな転移巣があつたが, 大静脈に癒着しているためそのままにし, 右腎と右副腎のみ摘除した. 組織学的には, 紡錘形細胞肉腫様で, 一部管状腺癌構造に移行していた. 広範な転移のため, 術後175日目に死亡した. 以上3症例の組織学的検査の結果, 肉腫様構造から明細胞腺癌像への移行が認められ, 肉腫様腎腺癌と判明した. 肉腫様腎腺癌は, 稀で, 予後が極めて不良である.