抄録
ヒト陰茎循環動態を観察する目的で, 酸素電極法を用い, ヒト陰茎海綿体組織, 陰茎皮下組織および大腿皮下組織の酸素分圧を, 非勃起時および勃起時について連続測定した.
対象は20歳~26歳, 平均20.5歳の健康成人男性16名である.
非勃起時, 陰茎海綿体組織酸素分圧は60±30μv (平均±SD) で勃起開始と同時に棘波状の酸素分圧上昇を認め494±218μv (平均±SD) となつた. 勃起継続期には, 253±116μv (平均±SD) まで徐々に下降を認め, そのまま高いレベルで安定した推移を示した. 勃起弛緩時には, 401±274μv (平均±SD) と一過性に上昇し, その後, 非勃起時のレベルに下降した.
陰茎皮下組織酸素分圧は, 非勃起時191±86μv (平均±SD) であつたものが勃起時145±105μv (平均ャSD) と下降を認めた.
その結果, 陰茎勃起は陰茎海綿体組織への急激な血液流入によつて起こり, 勃起持続中は血液の流入および流出が持続していることがわかつた. すなわち, 陰茎海綿体の輸出静脈系の閉鎖機構が働かなくても勃起がおこることを示している.
勃起安定時には, 流入血液量が勃起開始時に比し減少する結果が得られ, これは, 陰茎体積が一定となつた時点での陰茎流出路を含めた陰茎海綿体に発生する抵抗によるものと考えられた.
また, 勃起時, 陰茎海線体組織とは逆に, 陰茎皮下組織では血流が減少することを確認した.
勃起陰茎弛緩に際しては, 流入血液量の減少もさることながら, 陰茎海綿体内の動脈血液を駆出させるため陰茎海綿体内筋組織が収縮を起こしている可能性が推察された.