1983 年 74 巻 4 号 p. 503-513
腹圧などのストレス負荷時における尿 continence の機序を明らかにするため, 対照男性13名, 対照女性10名, 前立腺肥大症の男性14名, stress incontinence (緊張性尿失禁) の女性11名に対して, 膀胱頚部, 尿道前立腺部, 外尿道括約筋部の尿道閉鎖圧, 外尿道括約筋EMG, 外肛門括約筋EMGを同時記録し, 咳または随意肛門収縮を行わせたときの, 各々の変化を測定した.
対照の男女性と前立腺肥大症の男性では, 咳または随意肛門収縮によつて, 両括約筋EMGの活動電位の増加とともに, 膀胱頚部, 尿道前立腺部, 外尿道括約筋部の尿道閉鎖圧の上昇がみられ, 常に膀胱内圧より高い値を示した. stress incontinence の女性では, 咳または随意肛門収縮で, 両括約筋EMGの活動電位の増加にも拘らず, 膀胱頚部と外尿道括約筋部の尿道閉鎖圧は, 極く僅か上昇するかまたは全く変化を示さなかつた.
この結果からストレス負荷時の尿 continence の維持は, 尿道平滑筋の反射的収縮に基くのではないかと考えられる.