日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
尿路性器悪性腫瘍における基底膜蛋白 laminin と fibronectin の局在
坂下 茂夫橋本 博黒田 一秀
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 74 巻 5 号 p. 777-789

詳細
抄録

尿路性器腫瘍 (睾丸腫瘍4, 腎癌6, 膀胱癌14) および正常睾丸・腎・膀胱組織における laminin, fibronectin の局在様式を, 間接法螢光抗体法で検討した. fibronectin は腫瘍・正常組織を問わず間質に広く存在していたが, 上皮性細胞内には認められなかつた. しかし, 睾丸悪性リンパ腫のような非上皮性腫瘍細胞では, 腫瘍細胞に fibronectin の局在がみられた. 腫瘍の上皮性・非上皮性を区別する上で, fibronectin の局在様式は, 参考になると思われた.
基底膜特異蛋白 laminin は, 正常組織では上皮下基底膜及び血管基底膜に限つて存在していた. 腫瘍では起源細胞の種類により, laminin の局在様式は異なつていた. yolk sac tumor は, laminin 産生の多い腫瘍で, 腫瘍細胞・細胞外基質に laminin の局在が認められた. 腎癌では, 腫瘍細胞には laminin の局在が認められないものの細胞周囲の基質に laminin が検出された. 膀胱腫瘍は laminin 産生の少ない腫瘍で, 腫瘍細胞・細胞外基質共に laminin 陰性であつた. しかし, 浸潤癌を含めたすべての膀胱腫瘍で, 腫瘍細胞塊と間質は, laminin 陽性の膜構造で境されていた. laminin は基底膜の lamina lucida に存在する基底膜特異蛋白である事から, 膀胱腫瘍は lamina lucida に包まれたまま浸潤する事が示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top