日本泌尿器科學會雑誌
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閉塞性腎疾患における尿中 kallikrein に関する研究
中嶋 久雄熊本 悦明島本 和明飯村 攻
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1984 年 75 巻 1 号 p. 126-137

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抄録

尿中 kallikrein 排泄量を radioimmunoassay により測定した. 正常対照34例では107±15μg/dayであり, 少なくともすべて50μg/day以上であったが, これに比し, 尿路閉塞性疾患では尿中排泄量の低下が著明であった. すなわち同疾患のうち高尿素窒素血症を持たない32例でも57±6μg/dayであり, 高尿素窒素血症のある7例では2.0±0.8μg/dayとさらに著明な低下を示していた. また嚢胞腎でも71±29μg/day, 海綿腎でも37±9μg/dayと低下が認められた.
尿路閉塞性疾患における kallikrein 排泄量と腎機能検査との比較検討を行なうと, 24hrCcr. とr=0.61, 腎濃縮能とr=0.70と有意な正の相関を示し, また尿中β2-microglobulin とはr=-0.61, 血中β2-microglobulin とはr=-0.59と有意な負の相関を示した. また24hrCcr. が正常, 腎濃縮能が低下している症例では尿中 kallikrein 排泄量は低下しており, 尿路閉塞性疾患では腎濃縮能と同様尿中 kallikrein 排泄量もGFRに比較して早期に障害されると考えられた.
また偏側水腎症の水腎側ではGFR, 腎濃縮能と共に尿中 kallikrein 排泄量, kallikrein/GFRは著明に低下していた.
次に postobstructive diuresis における尿中 kallikrein 排泄量と prostaglandin E2排泄量を測定した. 尿中 kallikrein 排泄量は著明に低下しており, diuresis 時もほとんど増加しなかったのに対し, 尿中 prostaglandin E2は diuresis 時著明に増加するのが認められた. その成績から postobstructive diuresis の発症に対し, 腎の kallikrein-kinin 系の関与は否定的であり, むしろ腎 prostaglandin 系の関与が推測される.

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