日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
腎移植における免疫学的研究
第1報 Azathioprine, mizoribine 併用による免疫抑制法の基礎的ならびに臨床的検討
松浦 健国方 聖司神田 英憲井口 正典秋山 隆弘栗田 孝
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1984 年 75 巻 2 号 p. 255-262

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抄録

腎移植における免疫抑制法として, 当科で1980年以降行なっている azathioprine, mizoribine 併用投与法による, 生体腎移植の1年生着率は75.6%とほぼ満足できる成績が得られた. しかし, 免疫抑制法の副作用として白血球減少症が特に腎機能低下時に比較的多く発症し, mizoribine は腎排泄型の薬剤であるため, 腎機能低下時には蓄積により副作用が増強されたものと考えられた.
Azathioprine, mizoribine のPHAによるリンパ球幼若化反応の抑制効果を3H-thymidine uptake および flow cytometry により検討すると, 両剤併用により効果増強が期待できる成績を得た. また, 両剤の作用形式を膀胱腫瘍細胞株を用いて, flow cytometry により検討すると, 細胞はS期に蓄積し, 両剤ともDNA合成期を延長させているものと考えられた. Azothioprine, mizoribine の purine nucleotide 合成系における作用点は異ることから, 併用によりDNA合成過程を sequential に block することで併用効果が生じるものと考えられた.
Azathioprine, mizoribine 併用によりPHAによるリンパ球幼若化反応抑制が増強されたことから, 免疫抑制効果の増強が期待され, 試みるべき免疫抑制法と考えられるが, 副作用も強く出現する可能性が示唆され, 特に腎機能低下時には, mizoribine 血中濃度のモニタリングなど, 投与量については十分な注意が必要と思われる.

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