日本泌尿器科學會雑誌
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膀胱の Carcinoma in situ の臨床と Thomsen-Friedenreich antigen の検討
佐々木 絹子丸 彰夫坂下 茂夫小柳 知彦
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1984 年 75 巻 2 号 p. 269-277

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抄録

昭和52年以降過去6年間, 当科で経験した膀胱の Carcinoma in situ 13例 (Primary 9例, Secondary 4例) の臨床について検討し, さらに得られた腫瘍組織と若干の腎盂尿管腫瘍組織について, ABH型物質より, より基本的な細胞膜抗原である Thomsen-Friedenreich antigen (以下T抗原) の有無について Coon 等のPAP法をもとにして, Avidin-Biotin-Peroxiddase 法を用いて調べた. 症状的にも内視鏡的にも膀胱炎様の所見が主体で, 膀胱腫瘍としては非定型的臨床症状を呈したが細胞診はいずれもIIIb以上で病変も膀胱全域, 時に尿管前立腺にも及ぶ広汎性, 浸潤性が特徴的であった. 治療は13例中10例は最終的には膀胱全剔術, 1例は放射線のみ, TURは2例であった. 正常の細胞ではT抗原はシアル酸によってかくされているため, T (-) であるがノイラミニダーゼ処理をしてシアル酸を除去するとT抗原が露出してくるため陽性となる. Coon 等と同様に, これをT (-), cryptic T (+) と表現した. 癌化した細胞ではシアル酸が不全でT抗原が最初から露出した状態になっている為T (+) であり, これがさらに進むとT (-) は勿論の事, ノイラミニダーゼ処理をしても陰性で, これをT (-), cryptic T (-) とする. 抗Tとしては peanut agglutinin を用いた. ABH (-) であったCIS 9例ではT (-), cryptic T (+) 3例, T (+) 1例, T (-), cryptic T (-) 5例であった. high grade の腎盂尿管腫瘍10例では全てABH (-) であったが, T (-), cryptic T (+) が5例あり, 追跡可能な4例中3例生存し1例死亡していた. 両抗原を検索する事により, より良く予後を予測できる可能性がある.

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