日本泌尿器科學會雑誌
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Cost effectiveness の観点からみた膀胱炎の治療における薬剤感受性検査の有用性
富永 登志金子 裕憲岸 洋一新島 端夫
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1984 年 75 巻 3 号 p. 453-458

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抄録

膀胱炎症状を呈し尿検で膿尿を認める場合, 尿中細菌の同定及びその感受性検査を施行する. しかし実際には初診時に膀胱炎の診断を下した場合, 適当と思われる抗菌剤を投与し, 薬剤感受性検査の結果が判る時には患者は治癒していることが多い.
この観点から, 673人の膀胱炎患者 (単純性402人, 再発性182人, 複雑性89人) に対して, 尿中細菌の同定及び感受性検査が実際どの程度役に立つたかを retrospective に検討した.
尿中細菌の培養の結果 Escherichia coli のみが同定された症例は374例 (単純性250例, 79%, 再発性86例, 77%, 複雑性38例, 60%) で, 同定された菌の75%を占め, 又, E. coli の感受性検査の結果では257例 (69%) は検定した薬剤全てに感受性であった. 菌の同定及び薬剤感受性検査を実際に利用した症例は39例 (6%) で, その内訳は急性単純性が有用率4%, 再発性が6%, 複雑性が16%であった. 現在ほとんど全ての膀胱炎に施行している薬剤感受性検査は, Cost effectiveness の観点からみると, 急性単純性膀胱炎の患者ではもっと少なく出来ると思われる.

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