日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
小児先天性水腎症 (腎盂尿管移行部狭窄) 70腎の臨床統計
島田 憲次薮元 秀典森 義則生駒 文彦
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 75 巻 3 号 p. 476-483

詳細
抄録

当教室開設以来9年半の間に手術を施行した小児先天性腎盂尿管移行部狭窄64名70腎の臨床統計を述べ, なかでも術後経過が順調でなかった症例, 再手術を要した症例に焦点を当て検討を加えた.
1. 男女比は4:1で男子に多く, 1歳未満が23%を占めていた. 臨床症状は発熱, 腹部膨隆, 腹痛が多くみられた.
2. 患側では左側が右側の約4倍多くみられた. 両側性狭窄は25%, 反対側低形成あるいは無形成腎は6%にみられた. VUR合併は8腎11%にみられた.
3. 腎盂形成術計74回のうち dismember 法が58回を占めていた. なかでも Anderson-Hynes 法が全体の3/4と最も多く施行された. 腎外腎盂縫縮を加えたのは1/3のみであった.
4. 術後の判定ではgood 60%, fair 34%, poor 6%であった. 水腎の程度と予後には有意の差はみられなかった.
5. 約半数の症例では術前より膿尿がみられた. 形成術後は約80%が半年以内に膿尿が消失した.
6. 患側よりの尿量の40~60%を排泄する症例が最も多く, 尿量の少い症例でも30%以上を排泄していた.
7. 腎の組織障害度は全体に軽度で, 高度障害群は9%のみであった.
8. 術後1ヵ月以内に腎瘻抜去できたのは71%であった. 腎瘻抜去を困難にした因子はVURの合併, 腎盂尿の混濁, 形成術前の腎瘻設置, 単腎, 腎内拡張型水腎症が考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top