日本泌尿器科學會雑誌
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腎癌から分離した基底膜抗原とその組織内局在
坂下 茂夫中西 正一郎出村 孝義榊原 尚行小柳 知彦
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1984 年 75 巻 4 号 p. 594-599

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抄録

手術によって別除した腎細胞癌組織から, Risteli らの方法によって基底膜特異蛋白 laminin の pepsin 消化 fragment を分離した. この蛋白は分子量200~250×103および90×103前後の2種類の fragment からなり, これらは Risteli らの命名したP1及びPaに相当していた. また, この蛋白はマウスの laminin に対する抗血清とも反応した. このヒト laminin を抗原として抗 laminin 抗血清を調整した.
32例の腎細胞癌について, Ekblom らの方法に従って通常の病理組織診断用のパラフィン包埋標本から作製した薄切切片を用い, 腎細胞癌における laminin の局在様式をPAP法にて観察した. 腎細胞癌によって産生される laminin の局在様式は, 正常尿細管基底膜の laminin 局在様式との類似性からI~III型に分ける事が出来た. I型, II型, III型はそれぞれ12例, 16例, 4例の腎細胞癌に観察され, このうちIII型は最も未分化と考えられ, 4例の患者はいずれも癌死していた. したがって, laminin の局在様式は, 腎細胞癌の分化度をみる指標となりうると考えられた.

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