日本泌尿器科學會雑誌
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急性腎皮質壊死の1救命例
堂北 忍原田 忠宮形 滋土田 正義
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1985 年 76 巻 2 号 p. 244-251

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抄録

患者は, 25歳の女性で, 分娩後, 腟壁および頚管裂傷からの大量の出血によりショックに陥った. 輸血および子宮全摘によりショックから回復したが, DICを併発しており, また分娩直後より無尿が続いた. DICを合併した急性腎不全と診断し, 血液透析を行った. 無尿は20日間続き, その後尿の排出がみられたが, 十分な利尿がつかず, 腎機能の改善も認められなかった. 4カ月後に行った腎生検の結果, 急性腎皮質壊死の組織診断を得た. 発症から1年以上経た現在も, 週2回の慢性透析を続けている. 最近の検査成績では, クレアチニンクリアランスは13ml/minで, 腎臓部に石灰化は認められていない.
本邦において報告された急性腎皮質壊死62例 (自験例を含めて) を集計し, 統計的観察を行った. 救命された症例は, 11例で, 死亡率82%という予後不良の疾患である. 臨床的および組織学的に急性腎皮質壊死とDICとの関連をみて, 急性腎皮質壊死の成因にDICが深い関わりをもっていることを明らかにした.

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