日本泌尿器科學會雑誌
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顕微鏡的血尿を主訴とした両側腎動脈瘤の1例
腎動脈瘤の本邦171例の検討
北村 唯一上田 大介田島 惇阿曽 佳郎
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1985 年 76 巻 5 号 p. 744-751

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抄録

患者は39歳女性で, 1983年8月13日, 集団検診で顕微鏡的血尿を指摘され当科を受診した. 理学的所見では, 背部左側に軽度の血管雑音を聴取したが, その他に異常を認めなかった. 血圧は140/80mmHgで, 脈拍は整であった. 検査成績では, 血算, 生化学に異常を認めなかったが, 尿沈渣に顕微鏡的血尿 (12~13/HPF) を認めた. 腹部単純撮影で, 右腎門部付近に示指頭大の石灰化を認めた. 経静脈性腎盂撮影では, 両側腎盂に notch が認められた. CTでは, 右腎門部付近に小腫瘤と石灰化を認めた. 両側腎動脈瘤の疑いのもとに, 大動脈撮影を施行した所, 右側に2.2×2.1cmの, 左側に1.6×1.0cmの腎動脈瘤が認められた. 動脈瘤は両側とも形は嚢状で, 腎動脈第1分岐部に位置していた.
1984年2月14日, 右腎動脈瘤を切除し, 腎動脈枝を in situ で端側吻合した. 左側腎動脈瘤は, 大きさおよび形の点で, 右側よりも破裂の危険が少ないと判断されたため, 手術せず経過観察とした. 近い将来, 左腎動脈瘤も手術する予定である. 切除された動脈瘤は2.4×2.0×1.7cmで, 腎動脈との間に直径1.5mmの狭い交通路を有していた. 動脈瘤の壁は厚さ2~3mmで, 黄白色, 弾性硬で, 所々に石灰化を認めた. 術後経過は良好であった.
加えて, 本邦の腎動脈瘤報告例171例を簡単にまとめた. 両側腎動脈瘤は, 自験例を含めて, 本邦文献例中14例しかなく, しかも, その83.3%が女性であった.
結論として, 顕微鏡的血尿は, 腎動脈瘤発見の端緒となり得ることを強調した.

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