日本泌尿器科學會雑誌
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Print ISSN : 0021-5287
水腎症における病理過程
実験病理学的研究
柿木 宏介
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1986 年 77 巻 11 号 p. 1767-1778

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抄録

水腎症の病理過程を解明するため, ウサギの左側腎孟尿管移行部を完全結紮して, 結紮後300日までの期間にわたり病理形態学的並びに腎孟撮影・顕微鏡的血管造影法 (microangiography: MAG) による検索を行ない, 以下の成績を得た.
(1) 実験の早期に集合管・尿細管等の拡張と, その部の上皮の萎縮が生じた. この過程はネフロンの全域に及んだが, 腎孟に近い遠位側により強く, また, 直走する部分よりも迂曲部あるいは係蹄の頂の部, およびこれらの近傍の部により目立つという傾向を示した.
(2) 尿細管上皮は次第に萎縮し, それに伴いミトコンドリアの小型化, 極性の消失, 液状の内容物を容れた大きなライソゾームの増加, 基底膜の肥厚・屈曲・蛇行, および上皮細胞との離開部の繊細な基底膜様構造の発達が見られた. 糸球体は比較的早期に係蹄上皮足突起の癒合, 毛細血管内皮の小孔の乱れや消失を来し, 最後には硝子化するものも認められた.
(3) ボウマン嚢・尿細管等の拡張していた管腔が結紮後40日以降には狭窄に向かい, 腎盂も内腔の縮小を示し始めるようになった. 腎組織の萎縮と硬化はその後も進行を続け, ついには水腎症性萎縮腎というべき状態にまで進展した.
水腎症は, 尿路の通過障害にもとつく圧迫性萎縮, 尿路の内圧亢進による阻血性萎縮, および糸球体の濾過機能の低下に伴う萎縮とそれぞれに続く硬化の過程が複雑に関連して進展していくものと考察された.

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