日本泌尿器科學會雑誌
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無カテーテル尿管皮膚瘻術の臨床的検討
62例の手術成績ならびに期観察症例における回腸導管との対比
上門 康成新家 俊明粂田 耕資山本 悟平野 敦之小村 隆洋渡辺 俊幸大川 順正
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1986 年 77 巻 2 号 p. 268-275

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抄録

1972年1月より1982年12月までの11年間に和歌山県立医科大学泌尿器科で62例の無カテーテル尿管皮膚瘻術が施行された. 原疾患は膀胱癌30例, 子宮癌22例, その他の悪性腫瘍7例および良性疾患3例であった. 男女比は1:1で, 平均観察期間は16ヵ月であった. 術式別では, 両側尿管皮膚瘻術が23例および片側尿管皮膚瘻術が39例であった. Stoma 形成法は, Toyoda 氏法5例, everted nipple 法27例および U-shaped skin flap 法30例であった.
Stoma 狭窄は19例に発生し, うち9例は stoma 拡張により, 2例は revision によってそれぞれ治療された後無カテーテルの状態が維持され, 残りの8例は intubation を余儀なくされた. 従って狭窄が発生しなかった37例と合わせて計48例で無カテーテル状態の維持が達成された. Stoma 狭窄は, nipple type の stoma でその発生が少なく, また尿管径が細くなる程および尿管壁が薄くなる程発生頻度は増加した. Stoma, IVP像および尿路感染のすべてにおいて問題が認められなかった症例は21例 (34%) であった. 術後合併症は38例で発生した. 創感染, 腎盂腎炎および消化管出血などがその主なものであった.
9例における長期成績を回腸導管症例24例の長期成績と対比した検討では, 回腸導管では晩期合併症の発生が, 尿管皮膚瘻では sotma 狭窄が主要な問題であった. 現状では, 尿管皮膚瘻術の成功の鍵は, 拡張, 肥厚尿管を選択することにあるが, 正常尿管にいかにして適応させるかを検討することが今後の課題と思われる.

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