日本泌尿器科學會雑誌
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精液中のγ-GTP活性とその由来臓器の検討
公平 昭男岩崎 皓岩本 晃明今野 稔
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1986 年 77 巻 3 号 p. 428-431

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抄録

ヒト精液中のγ-glutamyl transpeptidase (γ-GTP) 活性は, 血清の約500倍もの高値であることが最近判明した. 今回, 特発性男子不妊症, 精索静脈瘤, Vasectomy 後症例, および正常症例計65例を対象にその精液中のγ-GTP活性を検討した. その結果, 特発性男子不妊症12.509±3,120mIU/ml (N=43) (うち無精子症11,578±2,844 (N=5)), 精索静脈瘤12,044±2,282 (N=5), Vasectomy 後症例12,656±3,118 (N=8), および正常症例13,216±3,549 (N=9) であった. これら各群間での有意差は認められなかった. またγ-GTP活性と精子数, およびγ-GTP活性と精子運動率との間に相関関係はみられなかった. 特発性無精子症および Vasectomy 後症例のγ-GTP活性が正常症例と有意差を有しないこと, および, 特発性精液瘤の穿刺液のγ-GTP活性が低値 (514, 34, 59mIU/ml)であることから, γ-GTP活性の由来臓器として精子, 睾丸, 副睾丸は否定され, 従って, 前立腺あるいは精嚢であることが判明した.
さらに先天性精嚢精管欠損症の射精液中のγ-GTP活性の著明に高いこと (47,320mIU/ml), および特発性精嚢拡張症の精嚢穿刺液の低値 (4,450mIU/ml) および同症例の射精液の高値 (19,540mIU/ml) から考案し, 精液中のγ-GTP活性の大部分は前立腺に由来し, 一部は精嚢に由来することが考えられた.

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