日本泌尿器科學會雑誌
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膀胱の感染防御機構の研究
末梢血多核球の尿中における貪食能と急性膀胱炎時尿中に浸出する多核球の貪食能等について
鈴木 康義豊田 精一真嶋 光福士 泰夫折笠 精一
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1986 年 77 巻 4 号 p. 574-580

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抄録

末梢血由来PMNの尿中停滞時間による貪食能の変化と尿中浸出PMNの viability, cell population, 原因菌貪食能, イースト貪食能につき検討した.
末梢血由来PMNは, 浸透圧が300-500mOsm/kgの尿中であれば5時間の停滞でも貪食能は十分保たれる. しかし200以下と550mOsm/kg以上になると3時間では貪食能は1/3に減じ, 800mOsm/kg以上になると1時間の停滞でも貪食能は消失する.
24例の急性膀胱炎患者尿中浸出白血球の viability は平均84%と高く, 浸出白血球の分類では99.79%が好中球で, ごくわずかにマクロファージを認めた. 24例中2例にわずかの好酸球の浸出をみとめた. 尿中浸出PMNの原尿中での原因菌貪食率は平均3.87%と低い値であったが, これを10%加血清PBSに戻すと貪食率は平均24.7%と上昇した. また尿中浸出PMNを10%加血清PBS中に入れてイースト貪食率をみると平均39.92%であるが, PMNを分離した原尿の浸透圧が280-520mOsm/kgの範囲のものは68%と高かった. 更に10%加血清原尿中におけるイースト貪食能を浸透圧別にみると300-550mOsm/kgの間であれば, その原尿中でも63%と高い値を示した.
以上より尿中浸出PMNは, 適度な浸透圧尿中であればその貪食能を十分有し, かつオプソニンがあれば積極的に貪食し得ることが判明した.

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