日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
腎細胞癌の免疫組織化学的研究
第2編 腎癌細胞の細胞膜糖鎖ならびに近位尿細管上皮抗原に関する研究
飯泉 達夫矢崎 恒忠加納 勝利小磯 謙吉小山 哲夫東條 静夫
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1986 年 77 巻 6 号 p. 886-895

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抄録

我々は, 20例の腎細胞癌組織, 腎細胞癌転移組織, およびヌードマウス移植腎細胞癌由来組織 (TSU-R1) において, 3種類のレクチン (soybean agglutinin; SBA. peanut agglutinin; PNA. wheat germ agglutinin; WGA) に対するモノクローナル抗体および抗近位尿細管上皮抗原抗体 (抗PTA抗体) を用い, 蛍光抗体法および蛍光染色を施行した. 原発腫瘍組織においては, 抗RTA抗体は全例で腫瘍細胞と反応したが, SBAは9例 (45%), PNAは3例 (15%), WGAは11例 (55%) とのみ反応した. 転移組織では, SBAのみが腫瘍細胞と反応を示さなかった. ヌードマウス移植組織においては, 抗RTA抗体は継代数10代の時点で作製した組織の腫瘍細胞とは反応したが, 継代数50代と組織では反応を示さなかった. WGAは継代数10代, 50代の移植組織の両者において腫瘍細胞と反応し, SBA, PNAは両者ともに反応を示さなかった.
我々が今回用いた蛍光抗体法および蛍光染色は, 腎細胞癌個々の性質および特微を概略的に把握するうえにおいて簡単でかつ有効な方法と考えられた. 特に腫瘍細胞における glyco-compounds の変化はその腫瘍の臨床的な悪性度を推測させる指標となる可能性もあり, レクチンを用いた蛍光染色は, 今後更に検討する必要があると考えられた.

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