1986 年 77 巻 9 号 p. 1455-1460
当科では1980年1月より1985年8月までの間に685例の患者に対し計1, 194回の経直腸的超音波断層検査を行い, 得られた断層像より前立腺重量, 前後径左右径比, 仮想円面積比等を計測してきた。前立腺癌症例19例, 手術適応となった前立腺肥大症症例42例, 前立腺炎症例145例, 正常例180例の計測結果を集計し, 以下の知見を得た.
1) 前立腺炎症例では正常例に比べ, 重量は低値, 前後径左右径比, 仮想円面積比は高値を示したが, いずれも有意ではなかった.
2) 前立腺癌症例, 前立腺肥大症症例とも, 正常例, 前立腺炎症例に比べ, 重量, 前後径左右径比, 仮想円面積比がいずれも有意に増加していた。
3) 前立腺癌症例では前立腺肥大症症例に比べ, 前後径左右径比, 仮想円面積比の増加の割に重量があまり増加せず, また仮想円面積比が同程度であっても前後径左右径比がより増加していた.