日本泌尿器科學會雑誌
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表在性膀胱腫瘍に対する Bacillus Calmette-Guerin (BCG) 膀胱内注入療法
第1報
平野 敦之新家 俊明上門 康成小村 隆洋曲 人保大川 順正
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1987 年 78 巻 10 号 p. 1769-1775

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抄録

表在性膀胱腫瘍患者31名に対して, BCGの膀胱内注入療法を施行した. 再発予防を目的としてBCG注入を行ったのは, 初発例19症例, 再発症例10例の計29例であった. BCGの投与法は, TUR後2週目より開始し, BCG80mgを生理食塩水40mlに溶解して膀胱内に注入し, 以後1週毎に計6回の注入を行った. 腫瘍の再発の有無は膀胱鏡検査および尿細胞診検査を定期的に施行し評価を行った. 初発例19症例中再発を認めたのは, 1例 (13カ月目) のみであり, 当教室における historical control 群148症例に比較して, 12カ月目までの再発率は, BCG注入群で有意に低い結果が得られた. 再発例10症例において, 再発を認めたのは, 検討観察期間中わずか1例のみであり, 本療法による著明な再発予防効果が認められた. さらに, CIS症例2例に対して, その治療目的でBCG注入を行ったところ, 2例共に尿細胞診が陰性化し, 1例では組織学的にもCISの消失が確認された.
免疫学的パラメーターとしてPPD皮内反応およびPHAによるリンパ球幼若化反応を本療法開始前後で比較したところ, 前者では本療法施行前陰性であった9症例のうち8例が陽性化を示したが, 後者では一定の傾向は認め得なかった.
副作用としては, 重篤なものは認められず, 大多数の症例で膀胱刺激症状が認められた他, 血尿, 尿感染および発熱などが認められた. しかし, 1例ではその刺激症状のためには, また1例では肉芽腫性前立腺炎の進行が認められたため, 本療法の中断を余儀なくされた.
以上より, BCG膀胱内注入療法は表在性膀胱腫瘍の再発予防ならびにCISに対する治療として極めて有用であることが示唆された.

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