1987 年 78 巻 11 号 p. 1923-1932
長さ約4cmのE-PTFEグラフトを, 人工尿管として, 自己腎移植した犬の腎盂と膀胱の間に移植し, 9頭において最長21カ月間観察した結果, 次の結論を得た.
(1) いずれの時期にも, 尿漏はみられなかった. 1例においてグラフトが脱落したために膀胱結石が形成されたが, 他の8例では結石形成はみられなかった.
(2) 9例のうち5例において, 腎臓の組織学的所見はほぼ正常であった. 残り4例は水腎症を示したが, このうち器質的尿路通過障害が存在したのは2例で, 原因はグラフトの屈曲およびグラフト脱落後の肉芽組織による狭窄であった。
(3) E-PTFEグラフト自体はほとんど変化を示さず, エオジン好性の無構造物質の侵入がみられるのみであった.
(4) E-PTFEグラフトは, ある一定期間において人工尿管として機能するが, やがて脱落する. これは, グラフトの周囲に再生上皮を伴った肉芽組織が発達するためであろう. しかし, この新生尿管ともいうべき管状構造物が, 尿を運搬する機能を示すことが示唆された.