日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
膀胱移行上皮癌131例の臨床病理学的検討
とくに深達度, 異型度ならびに発育様式と予後との関連を中心に
守山 正胤加藤 哲郎森 久阿部 良悦佐藤 一成土田 正義上坂 佳敬綿貫 勤
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1987 年 78 巻 11 号 p. 1940-1949

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抄録

原発性膀胱移行上皮癌の手術材料131症例を組織学的に検討した結果, 深達度, 異型度, 発育様式, リンパ管侵襲, 血管侵襲ならびに浸潤増殖様式の間には密接な相関を認めた.
これら組織学的諸因子はそれぞれよく予後を反映したが, 各因子を相関させて分析すると以下の結果が得られた. すなわち, low stage (pTis~pT1b) 腫瘍は全体として5生率71%と予後良好であるが, G3, 非乳頭状型, INFβ-γあるいはリンパ管侵襲を認める場合は, たとえ low stage であっても5生率30-50%と予後不良であった. また, high stage (pT2~pT4) 腫瘍は5生率24%と明らかに予後不良であるが, 乳頭状型あるいはリンパ管侵襲を認めないものは5生率50~53%と必ずしも予後不良ではなかった. 異型度は悪性度をよく反映しており, G1は予後良好 (5生率87%), G3は予後不良 (5生率17%) であった. G2の5生率は59%と両者の中間であったが, 発育様式, 深達度あるいは浸潤増殖様式によって予後に差がみられ, とくに発育様式によって予後良好群 (G2・乳頭状型, 5生率70%) と不良群 (G2・非乳頭状型, 5生率21%) に明確に二分された(p<0.001). 乳頭状腫瘍は予後良好であり, high stage かあるいはリンパ管侵襲を認めても5生率は50%以上であった. これに対して非乳頭状腫瘍は他因子にかかわらず予後不良であった. リンパ管侵襲の有無は low stage, ならびに乳頭状腫瘍の予後に影響したが, 血管侵襲は他の組織学的因子に随伴する変化と考えられた.

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