日本泌尿器科學會雑誌
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生体腎移植105例の経験
津川 龍三鈴木 孝治白岩 紀久男卞 在和谷口 利憲池田 龍介田中 達朗笹川 眞人宮澤 克人江原 孝工藤 卓次山口 智正川村 研二
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1987 年 78 巻 5 号 p. 880-887

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抄録

金沢医科大学病院泌尿器科においては, 1975年3月から1986年3月の間に105例の生体腎移植を腎臓内科などとのチーム体制にて実施した.
受腎者は男71, 女34, 平均年齢29歳, 提供者は男31, 女74で平均49歳であった. HLAでは identical が21例であった. 移植後の免疫抑制法は azathioprine, methylprednisolone を使用した. 術後の管理にはRI, 生化学検査および臨床所見を重視し必要に応じ特殊検査を併用した. 105例目が3ヵ月経過した時点での移植腎累積生着率は1年90.8, 2年83.5, 5年72.0%で, HLA identical であれば1年95.1%でそれ以降も同様であり, 9年目に81.5%となった. haploidentical 群では1年89.6, 2年80.2, 5年64.9%で, 2年目において有意差をみた. 生存率は1年96.9, 2年95.8, 4年92.7%で以後変わらず, 又, HLAによる差はなかった. 興味ある例としては acquired cystic disease of the kidney に腎癌を合併した例に両側腎摘を行い, 1例は慢性拒絶反応により移植腎摘除を行ったが, 1例は5年10ヵ月生着中で2例ともに悪性変化はなかった. 早期合併症は急性拒絶反応, ATNのほかに, 特記すべきものとして尿管壊死による尿漏3例をみた. 死亡例は6例であった. 105例の経験から, 外科的合併症が疑われたならば, ためらわずに再開創して各部を点検することが治療にも直結し良策と考えられる. 腎不全患者の増加, 内外の状況を考え, 泌尿器科医の責任の重大性を強調した.

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