日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
上部尿路機能に関する研究
第25報 急性上部尿路内圧上昇時の尿管循環動態
新里 滋
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 78 巻 9 号 p. 1513-1519

詳細
抄録

上部尿路内圧の異常上昇は臨床的にしばしば認められる. この際の尿管壁内の循環動態は不明である. また赤坂らはホルマリンの尿管蠕動に対する影響を報告しているが, 尿管壁内循環動態に対しては明らかでない. 以上の二点を明らかにする目的で以下の実験A, Bを同時に行い次の結果を得た.
実験動物は体重11.2~23.2kg, 平均16.4kgの雑種成犬を用いた.
実験A) 一側上部尿路を閉塞状態として, 尿管内に生理食塩水を一定の速度で注入し, 尿管内圧, 尿管壁内酸素分圧の測定記録を施行した. その後閉塞状態を解除し, 酸素分圧を連続記録した. 内圧は液注入終了時63.3±10.6cmH2Oと急速に上昇後一時的に内圧が低下し, その後漸次上昇を続けた. 壁内酸素分圧は液注入直後より低下を示し, 対照時を100とすると注入終了時76.6±22.9と有意 (p<0.01) の低値を示し, その傾向は閉塞状態持続にて変化なく推移し, 閉塞状態を解除すると対照時に復する傾向が認められた.
実験B) 対側上部尿路を実験Aと同条件下とし, 5%ホルマリンを同様の方法で注入, 同様に連続測定記録した. 内圧は実験Aと同様の推移を示した. 酸素分圧は注入後より徐々に上昇し, 閉塞解除までに対照時100とすると157.4±58.8と有意 (p<0.01) の高値を示し, 閉塞解除後も有意に高い値で推移した.
以上の経過中, 血圧の有意の変動は認められなかった.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top