日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
尿管腫瘍pN1の1症例とリンパ節郭清の意義について
滝花 義男田辺 信明小林 克己小松 秀樹上野 精
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 78 巻 9 号 p. 1618-1620

詳細
抄録

症例は59歳の女性で, 肉眼的血尿を主訴として来院した. 理学的には左腎部に軽度の叩打痛を認めた. IVP上左腎機能は悪く, 拡張した腎杯の一部のみがかすかに造影される程度であった. 逆行性腎盂尿管造影では, 左尿管口より6cmの部位に不規則な陰影欠損を認めた. 左尿管下部の尿管腫瘍と診断し, 左腎尿管全摘術および左骨盤内リンパ節郭清術を施行した. 腫瘍は移行上皮癌で, 尿管筋層まで浸潤を認めた. さらに摘出したリンパ節中, 左外腸骨リンパ節の1個のみに転移を認めた. 術後, cisplatin と methotrexate による adjuvant chemotherapy を施行した. 術後18カ月を経過したが, 腫瘍の再発を認めていない. リンパ節郭清には治療的意義と補助療法決定のための診断的意義がある. 腎盂尿管腫瘍に対するリンパ節郭清の意義は, 今後検討していかなければならない課題の1つである.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top