日本泌尿器科學會雑誌
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長期透析者の多嚢胞化萎縮腎に合併した腎癌の4症例
飛田 美穂高宮 登美飯田 宜志北村 真北島 直登平賀 聖悟佐藤 威
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1988 年 79 巻 1 号 p. 164-170

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抄録

男性の長期透析患者に合併した多嚢胞化萎縮腎 (ACDK) に続発した腎細胞癌の4例について報告した.
症例1は61歳, 男性. 透析6年目に右側腹部痛と血尿を主訴として来院. 左腎はACDK・腎細胞癌で, 右腎はACDK・腎盂腫瘍の多重癌であった. 両腎摘除術, 右尿管摘除術および膀胱粘膜下切除術後, Adriacin (ADM) の膀胱内注入, cis-dichlorodiamminoplatinum (CDDP) 投与を行い, 以後維持透析中である.
症例2は61歳, 男性. 透析6年目に血尿, 倦怠感, 微熱および体重減少を主訴として来院. 両側腎共にACDK・腎細胞癌であった. 両腎摘除術, Fluorouracil (5-FU), ADM, CDDP投与を行い以後維持透析中である.
症例3は51歳, 男性. 透析12年目にシャントトラブルにて来院時, 腹部超音波検査にて右腎細胞癌を疑われた無症状症例である. 右腎のACDK・腎細胞癌で右腎摘除術後CDDP投与および放射線療法 (総量3,000rad) を行い, 以後維持透析中である.
症例4は61歳, 男性. 透析9年目に倦怠感および微熱を主訴として来院. 画像診断にて左腎細胞癌が疑われたが, 貧血, 黄疽, 肝腫大の急激な進行があり, 一般状態の急速な悪化と共にDICにて入院後9日目に死亡した. 剖検にて左側のACDK・腎細胞癌を認め, 肝への転移が認められた.

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