日本泌尿器科學會雑誌
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根治的腎摘除術における腎動脈塞栓術の意義
黒住 武史浜野 克彦八木 拡朗尾本 徹男岩田 康
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1988 年 79 巻 10 号 p. 1657-1662

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抄録

根治的腎摘除術の術前処置としての, 腎動脈塞栓術の意義をみるために, 塞栓術群37例の摘除腎について臨床病理学的に検討し, さらに, 非塞栓術群12例との比較を行い, 次の結果をえた.
1. 塞栓術後24時間でみられる腎梗塞の程度を, 皮質壊死を指標に4段階に分けてみると, 75%以上の梗塞を示す Grade IV は18例 (51.4%), 25%以下の Grade I は4例 (11.4%) と, かなりのバミラツキがみられた.
2. 塞栓術終了時のレ線的阻血度と腎梗塞の Grade との間には有意の相関はなかった.
3. 塞栓物質 (主に Gelatin sponge 単独か Steel coil 併用) の種類と, 腎梗塞の Grade との間には, 有意の相関はなかった.
4. 術中出血量は, 塞栓術群と非塞栓術群とで, 進展度別に比較した場合には, 差はみられなかったが, 塞栓術群の Grade IV 群は, Grade I~III 群や非塞栓術群に比して少なく, 塞栓術が確実に行われた場合の出血抑制効果が示唆された.
5. 手術時間と, 塞栓術の有無, 程度との相関はなかった.
6. 予後において, 塞栓術群は, 非塞栓術群よりも高い生存率を示し, 中でも, 血流遮断が確実になされた Grade IV 群では, その予後は最も良好であった.
以上の結果から, 塞栓術により, 腎血流を確実に遮断することは, 腫瘍細胞の散布を抑制し, 局所ならびに遠隔転移巣の発生を抑えることにより, 予後の向上に関与していることが示唆された.

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