1988 年 79 巻 12 号 p. 2027-2030
70歳の男性. 下大静脈壁に浸潤した腫瘍塞栓を伴う右腎細胞癌の患者に対して左腎静脈結紮, 下大静脈壁部分切除, 根治的右腎摘出術を行った. 術後血圧の低下や下肢の浮腫などは起こらなかったが, 術直後から乏尿の状態が続き, 第6病日には血清クレアチニンは12.5mg/dlにまで達した. 腎機能は保存的治療のみで次第に回復し, 第28病日には血清クレアチニンは2.8mg/dlにまで低下し, さらに3年後の現在では1.4mg/dlと術前とほぼ同じ程度にまで回復した. また, 胸部エックス, CTスキャン上も再発の徴候は認めていない.