日本泌尿器科學會雑誌
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腎臓の収縮蛋白に関する研究
II: 近位尿細管刷子縁におけるアクチンの機能的意義と尿管閉塞時における変化
坂上 善成
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1988 年 79 巻 2 号 p. 332-338

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抄録

家兎及びラットの腎臓を対象に正常腎におけるアクチンフィラメントの局在部位と糸球体及び尿細管機能との関係を検討した. さらに閉塞腎における収縮蛋白の変化をも観察した.
DACM-HMM蛍光染色法で家兎腎を観察すると糸球体, 近位尿細管刷子縁及び尿細管基底膜にアクチンフィラメントの存在が確認された. これらのアクチンの機能をみるためアクチンフィラメントを崩壊させる cytochalasin Bを投与して腎機能 (creatinine clearance, stop flow 法によるNa濃度曲線, PSP濃度曲線) を測定した. その結果 creatinine clearance, Na濃度曲線に特に変化はなかったがPSPの濃度曲線は正常と著しく異なった. これより刷子縁内のアクチンフィラメントは近位尿細管における物質輸送に関与しているものと考えられた.
一方ラット片側尿管を結紮して閉塞腎を作製して収縮蛋白含量 (アクチン, ミオシン) を測定したところ, ミオシン含量は閉塞腎にて有意 (p<0.05) に増加したが, アクチン含量は正常腎と特に差を認めなかった. しかしDACM-HMM染色でこれをみると, 糸球体や尿細管基底膜の蛍光は変らなかったが, 近位尿細管刷子縁の鮮明な蛍光は消失していた. したがって短期間の尿管閉塞による水腎症では刷子縁の障害が大きいように思われた.

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