日本泌尿器科學會雑誌
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脊髄損傷患者の性機能に関する研究
高坂 哲宮崎 一興
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1988 年 79 巻 5 号 p. 824-831

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抄録

脊髄損傷患者114例を対象に, それらを第9胸髄-第10胸髄を境に上位一下位, および麻痺の程度により完全麻痺-不全麻痺で分け上位完全麻痺, 下位完全麻痺, 上位不全麻痺, 下位不全麻痺の4群で性機能について問診および勃起力に関して陰部皮膚温度から検討した. 症例は16歳から58歳 (平均34.2歳), 罹患期間は平均3年4カ月. 問診結果は, 上位完全麻痺群で反射性勃起90.1%, 性交可能72.5%, 下位完全麻痺群では, 射精可能15.3%と良好であったが, 精神性勃起, 極致感はいずれも10%以下であった. 性的刺激 (視覚的性的刺激, V. S. Sと略す. および機械的陰茎刺激P. M. Sと略す) に対する陰部皮膚温度曲線は, 5つのパターンすなわち, 正常型 (Normo-response), 反射型 (Reflex-response), 低反応型 (Hypo-response), 混合型 (Mixed-response), 無反応型 (Non-response) に分類して検討した. 上位完全麻痺群では, 反射型88.2%, 上位不全麻痺群で混合型40%, 正常型33.3%, 下位完全麻痺群で無反応型38.4%, 低反応型30.7%, 下位不全麻痺群では正常型63.6%という結果であった.
また, 各群での陰部反応皮膚温度と勃起の程度は良く相関していたが, 下位不全麻痺群の5例 (22.7%) に皮膚温上昇を認めるにもかかわらず, 勃起が認められなかった. このことは, 勃起現象が血流のみではないことを示唆するものと考えられた.

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