日本泌尿器科學會雑誌
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小児外性器奇形に合併する先天異常の発現頻度
山口 孝則竹原 朗西 昇平郡山 和夫大藤 哲郎長田 幸夫
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1988 年 79 巻 8 号 p. 1434-1441

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抄録

1978~86年に宮崎医科大学泌尿器科に入院した停留精巣131例, 尿道下裂33例についてその合併異常に関しての検討を行なった.
患児のうち低出生体重児の占める割合は, 停留精巣で16.0%, 尿道下裂で30.3%と高率に存在した. また患児の入院時の身長・体重をそれぞれ各年齢での健常者と比較したところ全体に小柄の傾向であった.
何らかの合併異常を認めたのは停留精巣で46例 (35.1%), 尿道下裂で17例 (51.5%) であった. 尿路性器系ではそれぞれ13.7%, 45.5%であり, 停留精巣では陰嚢・精索水瘤 (5.3%), 尿道下裂 (4.6%) などであり, 尿道下裂では停留精巣(21.2%), 移動性精巣 (12.1%) の順に多かった. 尿路性器系以外の異常を認めたのは停留精巣で38例 (29.0%), 尿道下裂で10例 (30.3%) であり, 停留精巣では厳径ヘルニア (11.5%), 先天性心奇形 (5.3%) の順に多く, 尿道下裂ではその両方を9.1%に認めた. また停留精巣においては9例の先天性多発奇形症候群 (Multi-Congenital Anomaly Syndrome) を認め, これらの患児は身体発育遅延・精神運動発達遅延を有する頻度が高かった.
染色体異常は停留精巣61例中3例 (4.9%) 尿道下裂20例中2例 (10.0%) に認められ, 停留精巣の3例中1例は Down 症候群, 尿道下裂の2例は Klinefelter 症候群の核型であった.
泌尿器科医にとって, こうした外性器奇形を有する患児を診る際, 全身の合併異常に対する検索がぜひ必要と考える.

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