日本薬理学会年会要旨集
Online ISSN : 2435-4953
第94回日本薬理学会年会
セッションID: 94_1-YAL3
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第36回学術奨励賞受賞講演
記憶・学習を司る神経回路機構および認知機能障害に対する創薬に関する研究
*野村 洋
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キーワード: learning , memory, histamine, brain
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抄録

記憶の形成後、長時間の経過や神経細胞の脱落などにより、記憶は想起できなくなる。しかし、ふとした瞬間に自発的に想起できることがあるように、記憶痕跡は脳内に残っていると考えられる。脳内ヒスタミン神経は結節乳頭核から脳の広域へ投射し、認知機能や覚醒、食欲に関与する。私たちの研究グループは、これまでマウスの行動解析、神経活動の操作や神経活動イメージング、臨床研究を融合させて研究を進めてきた。そして脳内ヒスタミン神経系を活性化させることにより、一見忘れたように思える記憶でも、想起を回復できるようになることを明らかにした。さらに詳細な神経回路機構の解析により、ヒスタミンは学習時に活動した嗅周皮質ニューロンの再活性化を促進させることを見出した。このような記憶の想起を回復させる神経回路機構の解明は、アルツハイマー病などの認知機能障害の治療薬開発の一助となることが期待される。本講演では記憶の想起を中心とした記憶・学習の神経回路機構について、in vivoでの神経活動操作やイメージングを含めた最新の知見と今後の展望を紹介したい。

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© 2021 本論文著者
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