日本薬理学会年会要旨集
Online ISSN : 2435-4953
第95回日本薬理学会年会
セッションID: 95_1-CL
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会長講演
PACAPの発見から臨床応用を目指して
*宮田 篤郎
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抄録

下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)は、1980年代、TRH、GHRH、CRHなど向下垂体性視床下部ホルモンが次々と発見された後、さらに未知の視床下部因子を探索する過程において発見された。ラット下垂体細胞のcyclic AMP産生刺激活性を指標として、羊視床下部抽出物より、1989年に38アミノ酸からなるPACAP38が、その後 そのN末端 27 残基からなる PACAP27が単離同定された。それらの構造は血管作動性腸管ペプチド(VIP)に68%の相同性を示し、セクレチン・グルカゴンファミリーに属する。その受容体には、PACAP特異的なPAC1Rと、VIPと共有するサブタイプのVPAC1RとVPAC2Rがあり、いずれもGタンパク共役型受容体である。PACAP38は、脳内に広く分布し、視床下部に最も高濃度に存在するが、ほぼ全ての下垂体ホルモンの分泌を促進することが発見当初に明らかにされたものの、未だ視床下部における生理機能の全容は解明されていない。しかしながら神経栄養因子としての機能に着目し、脳卒中など虚血性脳疾患や神経変性疾患の治療へアゴニストとしての臨床応用を目指す一方で、神経伝達物質として痛覚伝達における機能を基盤として、アンタゴニストによる難治性疼痛治療への臨床応用を目指す研究が進められるようになって来た。

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© 2022 本論文著者
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