Proceedings for Annual Meeting of The Japanese Pharmacological Society
Online ISSN : 2435-4953
The 97th Annual Meeting of the Japanese Pharmacological Society
Session ID : 97_3-B-S46-5
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Symposium
Identification of anti-integrin αvβ6 autoantibodies in patients with ulcerative colitis and primary sclerosing cholangitis and develop diagnostic tools and treatments
*Shiokawa Masahiro
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CONFERENCE PROCEEDINGS OPEN ACCESS

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Abstract

潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)および原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis: PSC)は、いずれも原因不明の慢性炎症性疾患である。PSCの約30%(欧米では76%)にUCを合併することから、両者には共通の発症機序が推測されてきた。UCは大腸粘膜にびらんや潰瘍を形成し、腹痛、発熱、血便などを呈し、若年者を中心に高齢者まで幅広い年齢層で発症する。罹患数は増加傾向にあり、国内で22万人以上とされている。寛解と再燃を繰り返し長期療養が必要となることは、患者のQuality of lifeの低下を招く。PSCは胆管に生じる線維性狭窄が進行性に増悪し、胆汁うっ滞性肝障害を呈し、発症から10年を経過すると約半数が肝硬変を経て死に至る。有効な治療薬がなく肝移植が唯一の救命法であるが、移植後も再発率が高く極めて予後不良の疾患である。UC/PSCの発症メカニズムとして遺伝的素因と環境因子を背景として、自己免疫学的機序を介して大腸/胆管上皮細胞が障害されると考えられているが、未だ原因解明には至っていない。このようにUC/PSCは原因不明のため、特異的診断法や根治療法がなく、我が国の難病に指定されている。UC/PSCともに特異的診断法や治療法の開発のため、病態解明が切望されてきた。

そのような中、申請者らはこれまでに、UC患者血清中に感度92.0%、特異度94.8%、PSC患者血清中に、感度89.1%、特異度96.7%の抗インテグリンαVβ6抗体を発見した。[Kuwada, Shiokawa(corresponding author). Gastroenterology. 2021. Yoshida Shiokawa(corresponding author). J Gastroenterology. 2023.]

また、ヒト大腸/胆管上皮細胞にインテグリンαVβ6が発現していることを確認し、同抗体が細胞外マトリックスタンパク質であるフィブロネクチンとインテグリンαVβ6との結合を阻害することも見出した。申請者らの報告以降、アメリカ、スウェーデン、イタリアの他のグループからも、同国のUC患者で抗インテグリンαVβ6抗体が高率に陽性であることが報告され、申請者らの発見の再現性が確認されたとともに、世界中で注目されている。

これまで課題であったUC/PSC診断、病勢把握に貢献できると考え、市販可能な同抗体測定キットを開発し、現在厚労省研究班と共同で本キットの有用性を検証するために大規模な前向き試験を行っている。2024年には薬事承認、2025年には保険適応を目指している。

また、本抗体は阻害作用を有することから病態への関与が考えられ、最適な治療標的になりうることが考えられる。2022年に京都大学内にベンチャー企業であるLink Therapeutics 株式会社を設立し、開発を進めている。

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